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葡萄畑に犬がいる!



(私が最も好きなユキの写真。1991.10.12 ユキ2歳の秋。長瀞にて)


ちょうど20年前の今日この祝日。私と先代犬ユキとの出会いの日。今日と同じような晴天とも言い切れぬ薄曇りの朝、私は2階の窓から、ユキの姿を見ていた。ユキはまだ私の存在を知らず、一日ずっと葡萄畑に横たわっていた。やがて夕闇せまる葡萄畑で、私たちは初めて出会うことになる。この記事を書き上げる時刻から数えて、たぶん3時間後のことだ。


ユキと初めて出会った春、それは今から20年を遡る。ちょうど1990年5月3日のたぶん10時頃のことだったと思う。白い犬が、向かいの葡萄畑に横たわっているのを2階の窓から見た。家人によれば、ここ数日ほど、時折見かけていたと言うが、私が知ったのは、そのときが初めてだった。


ただそのときは、それだけのことで、そのまま忘れてしまった。ところが夕暮れ時になって、窓をしめようと、朝と同じ場所を見ると、朝と殆ど変わらない場所に、まだその白い犬は横たわっていた。


死んでしまったのだろうか?弱って動けないのだろうか?急に気になった私は、家を出て、金網の隙間から、その葡萄畑に入り、そっと近づいていった。漠然とではあるが「ともかく保護してやらなくては」の思いで、暴れたときのために、手には長めのロープを輪投げのように作って、10メートルほど歩いて、その犬の背後に近づいた。


3メートルほどの至近距離から、そっと覗き込むと、その白い犬は、こちらに背中を向けて、じっと横たわっている。顔は見えないが、かすかに息づかいで、腹の付近が動いている。寝ているのだろうか、よほど弱っているのだろうか、まだ私の気配には気づかない。犬の嗅覚や聴覚をもってすれば、普通なら、ありえないことだと思った。


意を決した私は、それでも万一に備えて、(その判断は正しかったのだが)そっと、その犬の頭の方から、輪にしたロープを投げかけるようにした。その瞬間、その犬はガバッと跳ね起き、低い姿勢のまま、数メートルほど離れた、道との境界にあたる生垣まで逃走したのだ。


けれども、そっと投げたロープが、ちょうど腰のあたりに絡まって、その端を持つ私との間で、まさに綱引きのような状態で止まった。ロープに気づいて、逃げられないと気づいたその犬は、「ぎゃおん」と悲しそうに一度だけ絶叫し、生垣の奥に身を潜めようとした。けれども私がロープを引くので逃げられないと悟ると、今度は、必死の形相で、「がるる」と犬歯を剥き出しして、私を威嚇しようとした。精一杯の抵抗である。


ロープを挟んで、私との距離は2メートル弱ほど。ポケットからパンを出して、差し出しては見るものの、まったくそれには見向きもせず、ずっと低く唸りながら、鼻にしわをよせて、相変わらず犬歯を剥き出しにしている(こういう時の犬は、たとえ弱っていようとも恐い)。


迂闊には近寄れないので、睨み合いを続け、30分ほどは経過しただろうか。このままでは、真っ暗になってしまうので、私としても何とかしたかったが、何度、接近を試みても、唸り返されるだけで、埒があかない。





(ユキと出掛けた初めての信州。1990.09.01 ユキ1歳間近となる頃)


さすがに我慢も限度と、とうとう、こぶしを握り(これほど言ってもわからないのか、との思いを込めて)片手を振り上げて「こいつ!」と怒鳴ると、何としたことか、虚勢の糸がプッツリと切れたものか、急に一転して、その犬は耳を伏せて、恭順の姿勢を示した(この変わり身の速さは見事だったと今でも懐かしく思い出す)。


そのあとは、そっと頭もなでさせたし、右足が骨折しているらしいこともわかったので、そっと抱き上げると、おとなしく抱かれていた。最初、葡萄畑に入った場所は、わずかな金網の隙間からだったので、そこからは、犬を抱き上げて戻ることができず、結局、50メートルほどを迂回して、出入り口を通り、わが家まで戻るには、さらに100メートル近くを歩かなければならなかったが、犬はその間もおとなしく抱かれていた。


私としては、初対面で、しかも30分近く、牙を見せて唸っていた犬を両腕で抱くので、その犬の顔が、ちょうど自分の喉下に来る。いったんおとなしくなったとはいえ、いつ喉笛をガブリとやられはしないかと内心はびくびくもので、そっと歩いた。


結局、自宅の玄関にいったん入れ、水やパンを再度差し出してみたが、受け付ける様子もなく、年齢も不明だが、かなり衰弱しており、足も骨折しているようなので、ともかく、近所の獣医に見せることとして、今度は400メートルほど離れた獣医師のところまで、再び抱きかかえて運び込んだ(さすがに腕も疲れた)。


結果的に、その犬はまだ7〜8ヶ月齢の若いオス(紀州系の雑種)であって、右足の骨折は、そこそこ時間が経過しているので、自力で癒着しかけており、手術の必要はないだろうということが、あとでわかった。いずれにしても、運び込んだときの様子では、かなり衰弱しているので、しばらく入院させて点滴と言う事になったのである。


これが、1990年5月3日、ユキと私が出会ったときの顛末である。その4日後の5月7日、退院と同時に、わが家に迎えることとなるわけだが、それがちょうど20年前の今日の出来事である。それ以降のことは、また折に触れて書きたいと思うが、ともかく、今日この日から、わが家の紀州の系譜は始まっている。



ユキは獣医に雑種と判定されたが、極めて紀州の特徴が色濃い外見をしていた。あえて言えば、紀州よりも少しだけ表情が優しい。けれども雑種とは思えない神々しさを備えていたと、親ばかな私は今でもあえてそう言う(笑)。そして、あと3時間すると、夕闇でユキと過ごした「はじめての時間」がまた始まる。。。

 



初代紀州 | 15:45 | comments(3) | trackbacks(0)
コメント
あ・・・・・・・・。
いい文章ですね・・。
ふわ〜〜〜っと涙があふれました。

夕やもの迫るブドウ畑。
本当に神様が遣わしてくれたのだと思いました。

ユキとの日々・・・また教えてくださいね。
from: yuki | 2010/05/03 7:03 PM
ありがとうございます。
ユキの記事にyukiさんからのコメント、普通なら匿名と思いかねませんが、今回の場合は、かろうじてわかります(笑)

この符合も何かのご縁かもしれません。

今頃、私はユキを病院に預けて帰宅し、これから始まる犬との生活に、思いを馳せていました。

どのような生活が待っているのだろうと。まさか 20年後には2頭の紀州と暮らしているなど、夢にも思わずに、です。

ユキはひいき目かもしれませんが神々しく、本当に神様の使いだったのではないかと、ふと思うことがあります。その後の私の人生に、最も大きな影響を与えた犬なのですから。

5月3日は、文字通り運命の日でした。たかが犬とは言えない、見えざる意思のような力を感じるのです。

傍から見ると大袈裟かもしれませんがね(笑)

from: snowy | 2010/05/03 8:09 PM
管理者の承認待ちコメントです。
from: - | 2010/05/14 6:55 PM
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