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里親志願時のトラウマ(2)


(同じ敗戦国でありながら、日本とドイツではなぜ、かくも動物愛護の精神が異なるのか?この本を読むと、その背景がわかる⇒「ドイツの犬はなぜ幸せか」グレーフェ(あや)子 中公文庫)
※なお今回の記事は、去る11月上旬の登録後、いったん取り消したものをそのまま再登録した。


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この記事は、数日前に書いた「里親志願時のトラウマ(1)」の続編である。この種の記述は、一つ間違うと人間性そのものについて、誤解を招きかねない危険なものであるが、敢えて書き足しておくことにした。

ユキを亡くしてから、一ヶ月ほどたった(7年前の)ある日、東京都・動物愛護センターのホームページから、保護された犬たちの一覧(公開リスト)を見ていた私は、たまたま白い中型犬で、ユキと良く似た犬が保護されていることを知った。しかも、保護期間は残り数日しかない(7日過ぎると処分される)。

そこで翌日の午後、会社を早退して、世田谷区八幡山にある、その愛護センターに出かけることにした。何しろ当時の私は、「短毛の白い中型犬」ならば、何でもユキに見えてしまう精神衰弱状態にあった。今にしてみれば、ソックリというのも、多少割り引いて考える必要がありそうだが、当時としてみれば、一刻を争う大問題に思えたからだ。

常識をもって考えれば、世の中には、捨てる神もいれば、拾う神もいる。つまり「私だけが保護者候補ではない」といういうことだって言える。ところが当時の私には、冷静な発想は思い浮かばず、「あと数日で処分」という現実が、ことさら事態の急を告げているように思えてならなかった。
そして、予定どおり翌日の午後、私はその愛護センターの前に立った。正門の脇には、柵で囲われた遊び場のようなスペースがあって、そこには何頭かの犬が放されていた。後に聞くと「引取りを待つ犬」だと言う。

用件を告げると、中年の男性が案内に立ってくれた。事務所の裏手から階段を下ると、コンクリート床の大きな室内に入る。
中央には細い通路があって、左右は犬たちを収容しておく、複数の小部屋に仕切られている。仕切りは部屋同士の境界も、廊下側と接するの壁の部分も、全面強化ガラス張りの構造で、見通しを最優先して作られていることがわかった。

区分けされた部屋はたぶん8室〜10室はあったと思うが、その中の1〜7までに番号が振られ、それが収容期限を示す「日数」に対応しているという。つまり捕獲収容された日を1番目として、一日ごとに部屋を移動してゆく。そして7番目の部屋で一夜を過ごしたあとは、翌朝の車で処分場(記憶が曖昧だが、たぶん城南センター)に連れて行かれて、そこで最後を迎えるという。だが少なくとも当時、世田谷では処分をしておらず、私にはそれがせめてもの救いだった。

その大きな収容部屋を出て狭い通路をさらに奥に行くと、もっとずっと狭いケージ型の収容スペースがある。そこは確か捕獲してきたばかりの犬が、入れられると説明されたが、何しろ7年以上も昔のことなので、詳しいことは、よく思い出せない。

そして、大部屋の中ほどに位置するスペースに、その白い中型犬はいた。雌で二日ほど前に捕獲されたのだという。場所は確か荏原付近?ではなかったかと思う。
そして間近に見ると、ホームページの写真で見た印象とは、多少違って見えることにも気付いた。その一番大きな違いは、ユキよりも若干小柄であるという点だったが、むろんそのような違いが、引き取りたいという意思の邪魔をするはずもなかった。

私は来訪の目的を改めて告げ、規定の講習を受けた後に、その犬を引き取りたいと改めて申し出たのだったが、返ってきたのは意外な一言だった。「申し訳ありませんが、この犬を引き取っていただくわけにはいきません」 「この犬は捕獲されたとき、すでに人を噛んでいるので、第三者に譲渡することができないのです」 「つまり、飼主さんが見つかれば、お返し致しますが、それ以外の方にはお譲りできません」
そんなルールがあるとは、全く知らなかった私は、長時間食い下がったが、その係員の答えは「規則でそうなっています」の一点張りで、取り付く島もなかった。

そのときの長いやり取りを再現するのは、あえて省略したいが、「犬が人を噛むには、それなりの理由があるはず」という、私の反論も全く通じない。東京都の愛護センターとは、いったいどこが「愛護」なのか?保護するとは名ばかりで実態はこんなものか、とのやり取りを、思い出すだけでも腹立たしくなる。

1時間以上ねばった末に、ともかく出直すことを心に決めて、その日はセンターを離れた。帰路をたどりながら、「今夜のうちに忍び込んで盗み出そうか」とさえ考えたのは、あのときの心がいかに病んでいたかを想起させることでもあり、いまさらながらに、自分が怖くなる。「犬1頭を盗み出し一生を棒に振る会社員?」まったく洒落にもならない話だ。

ところがその翌日、出先からそのセンターに再び電話した私は、意外な事実を聞かされることになった。「あの犬は、ちょうどあの後、飼主さんが見つかったので、本日の昼前に引取りに来る予定です」
それは、あまりにもタイミングが良すぎる話ではないか?昨日の食い下がり方が、あまりにも執拗だったため、職員がそうして口裏を合わせているのだと、私が疑ったのも無理からぬ話であろう。

そして、その日の午後も私は二日続きで会社を早退し、センターに駆けつけることになった。しかし「作られた話の筋書」では、すでにその犬は引き取られて「いないはず」なのだった。そこで私は一計を案ずる。下校途中の高校生をつかまえて「アルバイト」を持ち掛け、愛護センターを偵察させることにしたのである。
まことに「危ないおじさん」そのものではないか。まるで一種のストーカー行為だ。だが、その高校生の男子は、多少不審な顔をしながらも、理由を説明した私の指示に従ってくれた。つまり「見学と称して偵察を行う」のである。その犬が本当にいなくなっているのかどうかを確かめるためだ。

そして偵察結果は改めて「いなかったと思う」と、彼自身の口からもたらされた。信じてよいものかどうか、ここが思案のしどころだと思った私は、そのあとさらにセンターに電話で確認を試みることにした。
ただし、電話をかけたのは世田谷ではなく、同じ都の城南センターである。つまり他の施設から、裏をとろうとしたわけだが、そこでも、くだんの白犬の顛末は同じ話を聞かされる結果となった。

それでもなお、口裏を合わせているのではないかと、疑いを捨て切れない私は、改めて世田谷のセンターに電話をかけ、迎えに来るまでの詳細を執拗に聞き出すことまでしている。
今にして思えば、異常ともいえる行動だったかもしれない。そして、最後には都知事宛てのメールまで書いた。むろん、第三者譲渡の制約について、見直しを求めたのである。ただし、この書簡が本当に都知事まで届いたかどうかは、保証の限りではない。事務レベルでファイルされただけ、と考えるのが妥当なところかもしれない。
また、都知事宛のメールと同時に、同じ内容を以下の非常に長い担当部門宛てにも送信している。
「東京都健康局地域保健部環境衛生課動物管理係」および、同局長宛てのメールだ。そして念のために書き添えると、いずれの部門からの返信もなかった。この結果が何を意味するものかを、本当はもっと考えるべきなのだろう。

こうして、里親会での出来事についで、公的機関からの譲渡においても、再び躓いた私は、また一つの「選択肢」を放棄するに至った。むろん他の犬を引き出すという道も、まだ残されていたはずだったが、もはや私には、それだけの元気もなかった。ユキの面影にこだわり過ぎたということもある。それが今となっては慚愧の極みだ。

終わりに今回の出来事の発端となった「東京都動物愛護相談センター」のURLを以下に示す。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/douso/index.html

なお本題となった「収容動物情報」のページは、TOPページから入ったとき、非常に見つけにくいので、直行可能なURLも追記しておく。

http://www.taims.metro.tokyo.jp/eisei/syuuyoudb.nsf

見る度に痛ましくなるので、あまり行きたくはないが、それでも時々開いてしまうページだ。そして、このリストを見る度に心が痛むのは、今も昔も変わらない。さて、あの白い犬は、本当に無事飼い主の元に戻ったのだろうか。その思いだけは、今でも心の片隅にくすぶっている。(続く)


(再公開のための追記) この記事の冒頭にこうある。 「里親志願時のトラウマ(1)」の続編である と。けれども、先に(2)から復活させることにした。理由は、ここ2日ほどの周囲の状況に従った形だ。(1)も復活させるかどうかは、もう少し考えて決めたい(笑)。 いずれにせよ。里親志願時の私には、あまり良い思い出はない。心も最も病んでいた一時期であるから。
一期一会 | 12:33 | comments(0) | trackbacks(0)
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